側弯症外来
小児・思春期の側弯症から、大人の側弯・成人脊柱変形まで
2026年より、木曜日午後に新たに「側弯外来」を開始します。学校検診で側弯症を指摘されたお子さんから、大人になって背骨の曲がりや姿勢の崩れ、腰痛や背部痛・坐骨神経痛が気になってきた方まで、専門医が幅広く診察をいたします。
脊柱側弯症は、背骨が正面から見て左右に曲がるだけでなく、背骨のねじれを伴う三次元的な脊柱変形です。レントゲンで測定するCobb角が10度以上の場合に側弯症と診断されます。
特に多く相談を受ける、成長期のお子さんにみられる思春期特発性側弯症です。成長に伴い発生し、当初は痛みなどの自覚症状がないために、学校検診や家庭内で背中の左右差に気づいたことをきっかけに発見されます。2016年から運動器検診が始まり、小学校や中学校などの学校検診で指摘される頻度が以前よりも多くなっています。
一方で、大人になってから自分の背骨の曲がりや体の傾きが気になる方も少なくありません。大人の側弯は、左右方向の側弯だけでなくいわゆる腰曲がりとなる脊柱後弯や体幹バランス不良を伴うことがあり、成人脊柱変形とよばれます。成人脊柱変形ではレントゲンの曲がりの大きさだけではなく、痛みや立位バランスなどを統括して評価することが重要です。
側弯症とは
側弯症は、背骨が横に曲がるだけの病気ではありません。背骨のねじれを伴うため、前かがみになると背中や腰の片側が盛り上がっていることがあります。肩の高さ、肩甲骨の出方、ウエストライン、骨盤の高さに左右差が出ることもあります。
側弯症には、原因がはっきりしない特発性側弯症、先天性側弯症、神経・筋性側弯症、神経線維腫症や結合組織疾患に伴う側弯症などがあります。ただ側弯があると認識するだけではなく、原因となる疾患がないかどうかを確認する必要があります。その中で最も多いのが健康な人の背骨が弯曲してくる原因が不明な特発性側弯症です。
特発性側弯症は、10歳以降の思春期に発見されることが多く、本人に痛みがないまま進行をします。早期に発見し、これからの成長の残り具合とカーブの大きさを見ながら、適切な間隔で経過を確認することが大切です。カーブが大きくなる前に装具治療を開始することで、カーブの悪化を防ぐことが可能だと報告されています。
このような方はご相談ください
- 学校検診で側弯症の疑いを指摘された
- 肩の高さ、肩甲骨の出方、ウエストラインの左右差が気になる
- 前かがみになると、背中や腰の片側が盛り上がる
- 側弯があるといわれたが、脊椎外科専門医、側弯外来担当医には相談したことがない
- 胸部レントゲンで側弯があるといわれた
- 記念写真の撮影の際に肩が傾いていると言われる
- 以前から側弯症と言われているが、最近は検査を受けていない
- 装具治療が必要かどうか相談したい
- 大人になってから背骨の曲がりや姿勢の崩れが気になってきた
- 腰痛、背部痛、坐骨神経痛があり、姿勢や背骨の変形も気になる
- 骨粗鬆症があり、背中が丸くなってきた・身長が縮んできた
- 手術が必要と言われたが、まずは現在の状態を専門医に相談したい
側弯症で誤解されやすいこと
側弯症については、「姿勢が悪いから曲がった」「重いかばんを持ったから曲がった」「カルシウム不足が原因ではないか」などと心配されることがあります。しかし、これまでの研究からにこれらのみが特発性側弯症の原因であるとは考えられていません。
姿勢をよくすることや適度な運動、骨の健康を保つことは大切ですが、これらだけで側弯症の進行を抑えたり、矯正したりすることは難しいとされています。大切なのは、自分の状態を正しく知ること、必要以上に怖がりすぎないこと、自己判断で通院を中断しないこと、定期的な医師の診察で経過を確認することです。
成長期の側弯症について
思春期特発性側弯症は、小学校高学年から中学生にかけて発見されることが多い側弯症です。成長期に身長が最終身長へ向けて伸びる時期にカーブが進行しやすい時期と考えられています。
側弯症は、背骨の曲がりの大きさだけでなく、年齢、身長の伸び、骨の成熟度によって、今後進行するかどうか予想が可能です。軽度であれば定期的な経過観察だけでよい場合がほとんどです。中等度以上のカーブで成長期に進行する可能性がある場合には、適切な時期に装具治療を導入します。
当院では、診察とレントゲン検査をもとに、現在の側弯の程度、成長の段階、今後の見通しをご説明します。遺伝性疾患や神経奇形など原因となる疾患の詳細な評価が必要な場合には、大学病院など専門施設に紹介をしています。
大人の側弯・成人脊柱変形について
大人の側弯には、成長期にできた側弯変形が徐々に進行する場合と、若いころには大きな側弯がなくても中高年以降に椎間板や椎間関節の変性、骨粗鬆症による圧迫骨折などをきっかけに側弯が進行する場合があります。
大人の側弯では、背骨の曲がりだけでなく、腰痛・背部痛、坐骨神経痛、足のしびれ、歩きにくさ、体が前かがみになる、左右に傾いてバランス不良になる、長く立っていられないといった症状を伴うことがあります。
側弯の評価だけではなく、痛みに対する治療、必要に応じてリハビリテーション、骨粗鬆症の評価と治療、生活指導などを組み合わせ、患者さんの状態に合わせた治療方針をご提案しています。重度の変形や神経症状があり、手術治療が必要と考えられる場合には、専門的な治療が可能な医療機関へご紹介します。
当院の側弯外来で行うこと
1. 背中の形と全身バランスを確認します
肩の高さ、肩甲骨の出方、ウエストライン、骨盤の高さ、頭や体幹の傾き、前屈したときの背中や腰の盛り上がりを確認します。必要に応じて、神経学的診察により神経症状がないかどうか確認します。
2. レントゲンで側弯の程度を評価します
側弯症では、レントゲンで背骨の曲がりの角度を測定し、評価することが大切です。お子さんでは性成熟と骨の成熟度の評価を行います。大人の側弯では脊柱変形の大きさ、立位でのバランス評価、骨粗鬆症の有無、痛みやしびれの原因について評価します。
3. 治療が必要なタイミングを判断します
側弯症は、すべての方にすぐ治療が必要となるわけではありません。一方で、成長期に進行しやすい側弯や、大人で痛みや歩行障害を伴う脊柱変形では、適切な時期に対応することが重要です。
当院では、患者さんごとに必要な診療方針をご説明し、経過観察、装具治療、リハビリテーション、骨粗鬆症治療、専門施設への紹介を含めてサポートします。
治療の目安
治療方針は、年齢、骨の成熟度、側弯の角度、進行の有無、症状、日常生活への影響を総合的に判断して決めます。以下は一般的な目安です。
| 1.軽度の側弯 | 定期的な診察とレントゲン、MRIなどの画像評価で経過を確認します。成長期では定期的な受診によりカーブの進行をしっかりと評価を続けることが大切です。 |
|---|---|
| 2.中等度の側弯 | 成長が残っている場合、カーブの悪化の可能性が高い場合には側弯症矯正装具による装具治療を検討します。これまでの研究報告で装具治療は手術が必要な重症化を予防できることが報告されています。側弯矯正装具は国家資格をもった義肢装具士が医師の指示のもとに外来で作成します。 |
| 3.高度の側弯 | 大きなカーブや進行が強い場合には手術治療が必要となることがあります。状態を確認し、必要に応じて専門医が専門施設へご紹介します。 |
運動療法・リハビリテーションについて
側弯症に対して、シュロス法などの側弯症特異的運動療法が行われることがあります。ただし、運動療法だけで側弯症が完全に治る、あるいは進行を確実に防げるとまでは言い切れません。装具治療が必要となるような中等度以上の側弯症では体幹機能の維持や筋力保持を目的としてリハビリテーションによる運動療法を指導しています。
一方で、大人の側弯や成人脊柱変形では、痛み、筋力低下、歩行能力、姿勢保持能力に対するリハビリテーションが立位、歩行など生活のしやすさに役立つことがあります。当院では、側弯の評価を行ったうえで、必要に応じてリハビリテーションも含めた治療をご提案します。
ご家庭で気づきやすいポイント
側弯症の早期発見では、前屈したときの背中や腰の左右差を確認する前屈検査がよく用いられます。ご家庭では、以下のような点を観察してください。
- 前かがみになったとき、背中や腰の片側が盛り上がる
- 肩の高さに左右差がある
- 肩甲骨の高さや出方が左右で違う
- ウエストラインのくびれに左右差がある
- 頭や体が左右どちらかに傾いて見える
左右差があるからといって、必ず側弯症と診断されるわけではありません。正確な診断には医師の診察とレントゲン検査が必要です。
受診される患者さんへ
背中の診察とレントゲン撮影を円滑に行うため、可能であれば金属のない薄手の上衣、ウエストに金属のないズボンなどでご来院ください。
- アクセサリー、ベルト、ワイヤー付きのブラジャーは、撮影前に外していただく場合があります。
- 湿布、カイロ、貼付磁気製品などは、レントゲンに写り込むことがあります。
- ロングヘアの方は、背中が見えるよう高い位置でまとめていただくと診察がスムーズです。
保護者の方へ
側弯症は、本人に痛みや違和感がないことも多く、発見が遅れることがあります。学校検診で指摘された場合や、ご家庭で背中の左右差が気になった場合には、早めの受診をおすすめします。
「様子を見てよいのか」「装具が必要なのか」「運動や部活動は続けてよいのか」「将来、生活に影響するのか」といった不安に対して、できるだけわかりやすく説明します。
よくある質問
- 側弯症は痛みがなくても受診した方がよいですか?
- はい。成長期の側弯症は痛みがないまま進行することがあります。学校検診で指摘された場合や、背中の左右差が気になる場合は、受診してご相談ください。
- 姿勢やかばんの重さが原因ですか?
- 不良な姿勢やかばんの重さにより特発性側弯症が発生するとは考えられていません。正確な診断と経過観察が大切です。
- 運動や部活動は続けられますか?
- 多くの場合、日常生活や運動を続けることができます。ただし、原因疾患がある場合や重症な側弯の場合には運動制限や日常生活の注意が必要となる可能性があります。診察時に注意点を説明します。
- 大人の側弯も診てもらえますか?
- はい。大人の側弯、成人脊柱変形、腰痛・背部痛・坐骨神経痛を伴う背骨の変形についても診察します。必要に応じて、リハビリテーション、骨粗鬆症の評価と治療、専門施設への紹介を行います。
参考資料
- 岡田 英次朗、松本 守雄 【日常診療で役立つ小児整形外科の知識】体幹の疾患 特発性側弯症 小児科診療(0386-9806)78巻4号 Page 523-528(2015.04)
- 岡田 英次朗、渡辺 航太、松本 守雄 【小児整形外科の過去・現在・未来】(Part3) 臨床 <現在> 最近の側弯症治療のトピックス 主に思春期特発性側弯症について Bone Joint Nerve(2186-1110)7巻4号 Page 613-616(2017.10)
- 岡田英次朗 【変性側彎症・後彎症】 腰椎椎間板ヘルニアを治す Page 61-62 法研 東京都 2022年